こんにちは!
今日も優秀なスタッフのおかげでブログを書く時間をいただける、
他病院の医師からしたら、ジェラシー間違いなしのドクターコンちゃんです!
今回は、当院(以前の勤め先のはちや整形外科病院)における医師の働き方改革についてお話ししたいと思います!
さて、冒頭に述べた『優秀なスタッフのおかげで』という言葉。
これはまさに今回のテーマの本質部分を表しております。
しばらく退屈な一般論が続くので、
何が優秀なスタッフなのか早く知りたい方は、
4.ウチの病院ではまで飛ばしてください。
ブラックな働き方が当たり前の医師の世界。
エッセンシャルワーカーという性質上、すぐに改善しにくい面もあるのですが、
このブログ記事で、一つの最適解が見つかるかもしれません。
世間での働き方改革の背景
政府を挙げての、
『日本国民の働き方改革』が叫ばれ始めて久しいですが、
そもそも、その目的は、
日本の少子高齢化による労働者人口減少に対し、
女性を労働者に加えることでしょう。
これまで男性は朝から晩まで仕事で、
家事、育児は女性にすべてお任せしていたわけですが
(ああ耳がイタイ・・・)
これでは女性が職場復帰することはままなりません。
働き方改革で男性は定時に帰宅、家事育児を手伝う、
家のための休暇も積極的にもらうことで、
女性の家庭での拘束時間を軽減し、
その分女性に社会で働いてもらおう、ということですよね。
また、過労死など、
職場ストレスが無視できないレベルに社会問題化したことも一因でしょうね。
医師のこれまでの労働環境
医師は、一般の会社などではあり得ない長時間労働など、
労働基準法に超違反状態であるにもかかわらず、
本人たちの使命感や同調圧力もあってか
労働基準監督署に訴え出る人もこれまであまりいませんでした。
エッセンシャルワーカーということもあり、
医師の皆が労働者の権利を主張して定時帰宅、長時間の時間外労働禁止の方策をとると、
国民が病院に24時間365日フリーアクセスな状態を維持することができないという側面もあり、
あえて劣悪な労働環境のまま放置され、
『最後の聖域』などと言われてきました。
(こっちにしてみれば聖域ていうか監獄ですが(^^;))
実際に働いた時間分を時間外勤務として病院へ届け出ても、
表面上は健全な労働時間であると見せかけるために、
基準を超えた時間は勝手にカットされ、
その分の時間外手当は出ないという
ブラック病院もたくさんありました。
ちなみに、ボクが医学部卒業後、研修医として大学病院に勤めていた頃は、
基本的に医師は皆、早朝から夜遅くまで病院にいました。
研修医は英語ではレジデント(resident: 居住者)と言いますが、
まさに文字通りほぼ病院に住んでいるという状態ですね。
なんだか若手見習い料理人が、
賄い付きで店の2階に住まわせてもらってるみたいなイメージですねっ!(^^)!
(当然病院から賄いは出ませんが)
でも妻子持ちのベテラン医師も、
レジデントに指導する立場もあるのでしょうが、
遅くまでずっと病院にいたイメージです。
また、医師夫婦というカップルは珍しくありませんが、
他の仕事と同じで、子供がいる家庭で、
夫が朝から晩まで家にいなければ、
奥さんがフルタイムで職場復帰することはほぼ不可能ですよね。
医療界においても、医師不足解消のために産後の女性医師にも働いてもらおうという動きは当然あり、
結局そのためには男性医師の仕事を減らして早く帰ってもらおうという考えになりますよね。
近年の動向
近年、研修医の過労死が報道されて、
医師の異常な長時間労働にフォーカスが当たるようになりました。
他の職種同様、若手労働者の権利意識の変化もあってか、
未払いの時間外労働手当を支払うよう求めて、
複数の医師が労働基準監督署に訴えるケースも出てきています
(そもそも病院がズルをしていたわけですから、こういう場合、当然支払われています)
こういった社会情勢もあって、
『医師の働き方改革』も少しずつ行われつつある、
または行おうとしている組織が多いのではないかと思います。
ちなみにその方法論としては、世間一般の働き方改革の流れと同じで、
時間外労働の制限、休暇取得の義務化、育児休暇取得の奨励などなどです。
しかし、先ほども述べたように、エッセンシャルワーカ―という側面から、
一気に皆の労働時間を減らすことは難しく、そのためには人員を増やす必要があります。
ところが、国によって毎年、新しく医師になる人数はコントロールされているため、
急に働き手を増やすことは不可能です。
実際には、どの科の医師になるかはコントロールされていないため、
絶対人数が不足しているのではなく、
世の中で本当に必要とされている科に人が回らずに、
ラクで稼げる科や、ラクな働き方に若手医師が集中してしまうという、
医師偏在が問題ですが。
そもそも国が診療報酬額を決めているという
収益構造に根本原因があるのでしょう。
ウチの病院では
さて、ボクの場合はどうかと言いますと、
前の病院から当院へ移った瞬間に、
医師の働き方改革は完了してしまいました。
正確には、当院ではとうの昔にすでに解決済みであったということですが。
さて、ボクが勤務先を変えて気付いた、医師の働き方改革という点で、
ウチの病院の有利な点について挙げてみます。
2.単科病院である。
3.専門の医療事務スタッフが多数いる。
それぞれの項目をもう少し詳しく見てみましょう。
1.救急外来がない。
ウチは救急病院ではないため、
決められた外来時間にしか患者さんは受診できませんし、
救急車が夜間に来ることもありません。
よって、あらかじめ決められた外来や手術の時間にだけ勤務することになります。
この、救急外来があるかないかで、大きく働き方は変わります。
救急外来は、24時間365日開いている外来です。
大病院だと、救急専門医が交代制で昼も夜も控えていますが、
通常の市中病院ではそうはいきません。
夜間は、昼も働いている常勤医が、交代で救急当直を行います。
翌日が平日なら、救急対応で睡眠不足のまま、
午前中からそのまま自分の専門領域の外来や、手術を行います
(こうして書いてみるとアブないですね(^^;))
最近は当直翌日に半日なり休みをもらえる病院もあるようですが、
そもそも自分の外来や手術が予定されていたら、休みようがありません。
しかも、自分が当直でない日も、呼び出し当番の時は、
専門領域の対応がどうしても必要な救急患者さんが来た場合は、
家で深夜寝ていても呼び出されます。
そのまま緊急手術して、
また朝から外来や手術ということもザラです。
結局、救急病院というのは、
医師が仕事のスケジュールを自分でコントロールできないので、
どうやってもブラック化します。
そうならないためには、
一人主治医制ではなく、複数医師のチームで一人の患者さんを担当し、
いつでも他の医師が休めるようなシステム構築が必要です。
しかし、これには当然、
交代要員としての医師数が多く必要になるので、
その人員確保が大変だと思います。
というわけでボクは現在救急対応という業務が無いため、
自分の時間が確保しやすいわけです
(救急病院の医師から殴られそうです|д゚))
2.単科病院である。
単科病院とは、要は一つの科しかない病院ということです。
ウチは整形外科病院です。
入院患者さんの急変時に、
内科や脳外科などの医師がいないのは苦しい時もありますが、
逆に最初からシビアな内科疾患を持っている方に入院して頂くことが体制上できないため、
他の科とコラボが必要な難しい症例は扱えません
(他の科とコラボするのは色々大変なんです)
つまり、自分の専門領域の疾患の治療に専念できるとも言えます。
それよりも、単科病院であることの最大の強みとしては、
スタッフ全てが、整形外科に特化した知識、経験を持っていることです。
総合病院の場合、ありとあらゆる科があるため、
医師以外のいわゆるパラメディカルスタッフは、
さまざまな科の患者さんを担当する可能性があります。
病棟ナースも、一つの病棟に複数の科の患者さんが入院している場合もあれば、
部署移動でまったく違う科の知識が一から必要になることもあります。
オペ室ナースも、同じ科の手術ばかりについていれば、流れも頭に入りますが、
いろんな科のいろんな手術器械を覚えるのは至難の業です。
レントゲンやMRIなどの技師さんにしても、
検査が多様になるので覚えることが増えるでしょう。
ところが!!!ウチのように整形外科だけだと、
皆が整形外科のスペシャリストとして対応してくれるため、
医師はほとんど何も聞かれません。
カルチャー・ショックでした。
総合病院にいた時は、
病棟ナースからもどうしたらよいかと事細かに質問が来ていましたが、
今はほぼ良きに計らってくれます。
これまでの経験の蓄積で対応法が分かっているからです。
オペ室でも、手術器械の名前をド忘れして、
アレちょーだい、アレ!
と言ってもちゃんと欲しいものが出てきます(^^ゞ
アメリカでは医師に専属の器械出しナースがいて、
すごいスピードで的確な器械が出てくると聞いていましたが、
まさにウチがそれでした。
ここ、アメリカちゃうか?
と思わず関西人になってしまうほどです。
それのどこが医師の働き方改革になるのかと言えば、
とにかくあらゆる仕事の効率がよく、
スピードが上がるため、早く仕事が終わるのです。
総合病院なら夜までかかりそうなたくさんのオペ予定も、
きっちり定時に終わります。
ただし総合病院では難しいかもしれませんね。
せめてオペ室スタッフを一つか二つの科の専属とする必要があるでしょうね。
3.専門の医療事務スタッフがたくさんいる。
これは総合病院でもどこでも可能な、
医師の働き方改革にとって最も重要な項目です。
世の中では医療クラークとも言われますが、
ウチでは他の病院のクラークより仕事の担当範囲が圧倒的に広いため、
独自にクリニカル・サポーター(CS)という名前が付けられています。
ウチの外来では、医師一人が外来をやるのに2つの診察室を使い、
一部屋に1,2人のCSさんが配置され、
医師が患者さんと話している内容をCSさんが電子カルテに入力してくれるため、
医師はまったく電子カルテの入力をしません。
スーパー・カルチャー・ショックでした
(必殺技みたいですね( ゚Д゚))
当然、医師は患者さんの顔を見て話せますし、
話した後の入力作業もないので、
話す時間が長めにとれ、
患者さんの待ち時間を減らすことにもつながります。
また、診断書などの書類作成や、
入院患者さんのサマリー作成などもCSさんが代行で行ってくれ、
医師はそれを確認、承認すればよいシステムです。
どこの国でも、医師の仕事の半分はカルテを含めた書類記載作業と言われています。
つまり、ウチでは医師の半分近くの仕事が
すでにアウトソーシングで減っているということです!
やはりアメリカでは、カルテ入力専門のスタッフがいると聞いていましたが、
ウチがまさにそれでした。
ここホンマ、アメリカちゃうん?
と二度までも、エセ関西人になってツッコんでしまうほどです。
以上、長々と得意気に書き連ねてみましたが、
ホントにボクの今の環境は、総合病院の知り合い医師に知れたら、
ボッコボコに殴られかねない恵まれた環境と言えます
(そういう知り合いにはこのブログを発見されない方がよいですねっ)
冒頭に優秀なスタッフのおかげで、と述べましたが、
結局、医師の仕事をできるだけ専任のスタッフにアウトソーシングすることが、
医師の働き方改革のすべてではないかと思います。
ウチの院長にはこのブログを見てもらって、
スタッフの給与アップにつながるといいな、トカナントカ・・・
(後ろをキョロキョロ振り返る)
これからも素晴らしい職場で、
優秀なスタッフに囲まれて仕事に励むぞ!
(スタッフがこのブログ見ても、「焼肉オゴれ」とか言わないように)
こんな長い文章を最後まで読んでくださって、
カルチャー・ショックレベルでありがとうございました!!!
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