こんにちはー!
気が付いたら自分の誕生日が過ぎてたというお年頃の
ドクターコンちゃんです!
さて、数か月前でしょうか、
『外科医が自分の誕生日に執刀したオペの死亡率が高い(Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study)』1)
という論文がアメリカから発表され、ニュースにもなりました。
その論文を、今更ながら読ませて頂き、
考えさせられるトコロがありました。
と、いうわけで今回は、
外科医が執刀を避けるべきタイミングについてお話ししたいと思います!
外科医が執刀を避けるべきタイミング3選!!!
1.オペの後、大事なプライベートの予定がある
要は、上記の論文にもあった誕生日パーティーなどですね。
他にも、デートや、家族の大切な行事など、
さまざまなプライベートの予定が含まれるでしょう。
上記の論文の中で、
時間通りに仕事を終わらせなければ、という焦りが、
気が散ったり、いつもはしないような判断ミスなどを起こす可能性があると述べられています。
医師というのは、
エビデンス、エビデンスとデータ的なことばかり取り沙汰されることが多い中、
実際の臨床現場では、診断においても手術においても、
いちいち事細かに論文に載っていないような個々の患者さんの状態を、
経験的、直感的に判断して対処しているものです。
今回の論文でも、
誕生日にはその判断力の低下が起きうる点について指摘されています。
カンで医療やってんのかよー!
と思われるかもしれませんが、
『Brain Driven』2)という本の中で、
直感とか違和感というものの正体について、脳科学的に解説されています。
インプットされるすべての情報を脳では処理できないため、
脳は情報を常に取捨選択して、
無視していい情報は無視して、
とりあえず無意識下の記憶領域にとどめておくわけです。
エピソード記憶の中の似たような状況と、
目の前の状況が異なるという、
意識的に言語化できないけれど無意識に認識された差異が、違和感なのです。
というわけなので、
ボクは頭でっかちなだけで経験の少ないドクターの言うことは信じられません。
ちょっと脇道へそれましたが、
誕生日だから早く帰らなきゃ、などという時間的制約というのが、
手元のちょっとしたミスを誘ったり、
患者さんの容態変化を大丈夫だろうと甘く見積もったりする危険があることは、
ボクも経験上知っています。
ボク個人は、冒頭にも述べたように
自分の誕生日を忘れてしまうくらいなので、
誕生日の執刀で何か不都合を感じたことはありませんがねっ(>_<)
そもそも、誕生日当日が勤務日だったら、
誕生日パーティーは友人、恋人、家族に予定してもらわず、
週末など休みの日に企画してもらいたいものです(^^;)
しかし、救急患者さんも扱っている病院では、
そう都合よくいかないかもしれません。
何せ、休日だろうが深夜だろうが、緊急オペはあり得るからです。
知り合いのドクターがクリスマスイブの夜に、
何とか仕事を終わらせて帰り、
家族でケーキのロウソクに火をつけようとした瞬間に緊急オペの呼び出しがあって、
そのまま翌朝まで帰れず・・・
という話を聞いたことがあります。
大事な日など、この日は絶対に呼ばれないという状況を作るためには、
そもそも救急病院に勤務しないとか、
呼び出し当番ができる医師を豊富に雇っている必要があるでしょうね。
休みを取るにはマンパワー!
2.執刀医のコンディションが悪い
心身いずれも、執刀医のコンディションが悪い時は、
当然パフォーマンスが落ちますよね。
例えば、風邪で体調が悪い、
二日酔いで気持ちが悪い、
家庭内トラブルで精神的に参っている、
恋人にフラれて仕事が手につかない(オイオイ)などなど、
いくらでも考えられますよね。
とにかく、心も体もヘコンでいるときは、
正常の判断力が発揮されない、
そもそもモチベーションが低い、
集中できない、といったことになるでしょう。
ところで、これは外科医なら必ず経験したことがあるはずですが、
睡眠不足の当直明けでのオペもそうではないでしょうか?
ボクも若いうちは、ほぼ徹夜で仕事して、
翌日も朝からオペでも問題ありませんでした。
でも年齢とともに体力が衰え、
睡眠不足でのオペの時は、
いつものように手がスムーズに動かない、いつもより時間がかかるなど、
慣れたオペであればあるほど、
その微妙なパフォーマンスの違いに気づくようになってきました。
以前の記事『医師の働き方改革?ウチではもうとっくに完了してますけど・・・』
で医師のブラックな働き方についてお話ししましたが、
ブラックな働き方は患者さんにも不利益を及ぼす可能性があると思われます
(コワイコワイ・・・ブラック病院・・・)。
以前、翌日オペを控えた患者さんから、
先生、手術の日に寝不足だと困るから、
早く帰ってよく寝ておいてよ
なんていう、ありがたいお言葉をいただいたことがありました。
当時ボクは、
(この患者さんは事情をよく分かっていらっしゃる)
と感激したものです。
3.身内の執刀をする
これは外科医の間では昔からよく知られていて有名な言葉ですが、
「身内の執刀はするな」
とは、よく言われます。
ボクはこれまで幸いにも、
家族や親しい人の手術をする機会はありませんでしたが、
意外と自分の子供の骨折のオペをしたりする整形外科医もいるようです。
確かに、ウデに自信のある執刀医なら、
他の誰がやるよりも自分のオペの方が安心できるのかもしれません。
しかし、命に関わるような難しい疾患や、
どこかで引き際を見極めなければならないような誰がやっても困難なオペの場合は、
身内であるがゆえに判断を誤って無理をしてしまうなど、
感情のせいで平常心が保てない可能性があります。
また、そのせいでうまくいかなかったともなれば、
後悔は計り知れないものになるでしょう。
ボクとしては、自分の身内のオペについては、
ボクができるものであっても、
他の信頼できる執刀医に依頼して、
うまくいってもいかなくても全てお任せする、というスタンスです。
まとめ
執刀医が手術を避けるべきタイミングについて
ボクの考えをお話ししました。
実際は他にもまだあるかもしれませんが、
上記3つに共通して言えることは、
平常心でオペできる状態かどうか、だと思います。
皆さん、自分の執刀医には、
オペの前日には深酒をせず、
良く寝て頂き、
オペ当日は誕生日パーティーなどの大事な予定がない時でお願いしたいですねっ。
長くなりましたが、最後まで読んでくださって、
平常心でありがとうございましたーーー!!!!!
(テンション高すぎ)
参考文献
1)Kato H, et al. Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study. BMJ. 2020;371:m4381.
2)Brain Driven 青砥瑞人 著
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